理事長挨拶

いばらき腎臓財団は平成元年の前身のいばらき腎臓バンク設立から一貫して茨城県の腎不全予防対策と腎移植の普及を使命に活動してまいりました。県民の皆様、関係者の皆様の暖かいご支援に厚く御礼申し上げます。
しかしながら茨城県では未だ慢性腎不全による透析導入患者は増加を続け、その予備軍となる慢性腎臓病も糖尿病、高血圧、動脈硬化といった悪い生活習慣に根ざした生活習慣病による患者数の増加が続いております。腎臓は沈黙の臓器といわれるように、慢性腎臓病の初期には全く自覚症状を欠きます。
従って健診などによる尿検査、血清クレアチニン検査が唯一の早期発見の方法です。幸い平成30年度からは特定健診においても従来の尿蛋白検査に加え、血清クレアチニン検査も必要に応じての実施が認められました。茨城県民の皆様にも、最低限年に1回はこのような慢性腎臓病のスクリーニング検査を受けていただき、腎疾患の早期発見と重症化予防に努めていただければと思います。
腎移植については茨城県の実施件数もここ数年は着実に増加しておりますが、透析療法に比べるとその普及は未 だ不十分です。さらに全国的に伸び悩んでいる脳死後の臓器提供が茨城県内において着実に増加するよう に啓発を進めることも重要と考えております。県内の医療従事者に対して,臓器移植のメリット、必要性を伝え,腎移植に 興味を持ってもらえるような啓発活動を継続していき、さらに県内の多くの病院での臓器提供の機会がふえればと思います。さらに「いのちのバトン」といわれる臓器提供について、引き続き啓発活動を積極的にすすめていきたく思います。
当財団としては、第1に腎不全を作らないための慢性腎臓病重症化予防対策と腎疾患に関する啓発活動を、第2が 腎不全となっても腎代替療法としての血液透析,腹膜透析,腎移植という3つの選択肢を適切に選択、実施出来る体制整備を、第3に脳死下の臓器提供の県内の活性化実現の体制作りを柱に、県内の皆様、腎疾患を患う患者、医療従事者への啓発・広報活動、研究のサポートができるようにと思っております。
この様な皆様のお役に立てるいばらき腎臓財団の活動を継続していきたく思います。今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。

                (筑波大学医学医療系臨床医学域腎臓内科教授)